オーストラリアで絵の路上パフォーマンスをしてきた話【海外画家活動】

宮島啓輔作品説明・活動・関連情報

こんにちは。画家の宮島啓輔です。

2025年の夏、ベトナムでの3日の滞在の後にオーストラリアのシドニーに行き路上パフォーマンスをしてきました。

数日間の滞在中にたくさんの人に出会い、また是非来てねと言ってくれる人や、今でも連絡を取っている人、一緒に企画を今も進めている人と繋がれたりと、かなり濃い体験でした。

その為、この記事だけでは語りきれないボリュームなので、今回はざっくりとダイジェスト的にお伝えしていきたいと思います(それでも5000文字くらいあるので、細かい内容は別記事にしようと思います。)

オーストラリアは路上パフォーマンスの聖地

オーストラリアの街を歩いていると、本当にたくさんの路上パフォーマーをみかけます。

主に音楽系が多く、バイオリンを弾くお爺さんから、ギターのソロでQUEENやマイケルジャクソン、ビートルズの曲を演奏する人、マイクひとつで人を大勢集める人まで様々です。

日本でも、たまに繁華街で路上ライブをやっている人をみかけますが、しばらくすると警察がやってきて撤退されるように言われます。道路は通行のためのものでとどまって何かをする行為は違法にあたるのだそうです。

しかし、オーストラリアはバスキング(路上パフォーマンス)の聖地ともいわれており、国が積極的に誘致しているとも言われ、街の人にもその文化が浸透しています。

実際に私は主に絵でやっていて、絵や音楽などの芸術に対するリスペクトや距離感が日本に比べてけた違いに近いと肌感覚で感じました。

一応許可は必要ですが、確認を求められた事は一回もなく警察官も「素敵だね」といって手をたたいて通り過ぎていきました。

P.S.

この記事を書いている時に丁度開催していた大阪梅田での個展で販売し、旅立って行った作品のうち二枚の作品は、旅行中の外国の方が購入してくださりました。

数日後に日本から出国するとの事でお礼状が渡せなかったのが残念ですが、やはり海外の人と日本の人の芸術への価値観や立ち位置は平均的には違うのかなと思います。(肌感覚で感じた全体論です)

路上パフォーマンスで実際にやった事

やった事はいたってシンプルで、「絵を描く」と言う事をパフォーマンスとして行いました。

音楽系の人であれば、弾き語りをしたりする事で人を楽しませますが、絵の場合も同様に、絵の制作過程を晒す事で人の目を引く事を行います。

ここで重要なのは、絵を路上に広げて販売する事が主な目的ではありません。これは物販にあたるそうで、バスキングとは認められない事が多いそうです。

しかし、そこまで細かく規制されているわけでもなくパフォーマンスのおまけとして隅においたり、ヴィジュアルとして目立つ目的であれば大丈夫との事です。(音楽系の人は、弾き語りのチップ入れの横で自分のCDを販売していました。)

私は、日本から持っていった数点の作品を目を引くために並べていたら、それを観て話しかけてくれる人もいたので効果はありました。

また、音楽系の人であれば演奏によって人の足を止められますが、画家は少し異なります。

 描いてる途中の作品だけだと、ある程度まで描き進めていなければその人がどんな絵を描く人かが瞬時に伝わりにくいので、自己紹介的な意味も含めて既に完成している作品はあると良いと感じました。

それらのパフォーマンスに対して、良いと思ったり応援したいと思った人にチップを入れて頂くという仕組みです。

作品の販売等を除いたパフォーマンスに対するチップだけでも、日によって変動はありますが一日2~5時間座っていて4000~15000円程(平均1万円前後)を頂く事ができました。

さらに続けてコツを掴み、英語力などを上げたうえで、毎日続けると生活できるレベルにはなると感じました。

加えて、途中からある事がきっかけで始めた事があります。

それは、日本という事を活かしたパフォーマンスです。

どういう事かというと、主にやっていた事は外国人の名前を日本の漢字や片仮名の当て字で書いてあげたり、簡単な龍や水墨画風の絵を描いてみるという事です。

どのような経緯でこれをはじめたかについて詳しく書いてみようと思います。

パフォーマンス初日、人通りの多い通りで絵を描いており、上記のような絵を描く事によってチップを頂く事をやっていました。

すると、ある日本の文化などに興味があって日本語を勉強していて、いつか行きたいと話す若い男性が話しかけてきたので、簡単な立ち話をしていました。

その会話の中で、その方が「日本の文字の形がかっこ良くて」のような事を言っていたので偶然筆箱の中に入っていた面相筆とペン画用の墨汁を使って紙の切れ端に、日本の「富士山」や片仮名で「オーストラリア」と書いてみました。

すると興味を示してくれたような反応をしてくれたので、会話中に聞いていた彼の名前を漢字の当て字で書いてあげました。

「コノール」という名前を「来乗流」の漢字を当てて手渡しました。

すると、かなり喜んでくれました。

そして、簡単に書いたものだから無料でプレゼントするよと言ったにも関わらず、日本円で1000円ほどのチップを入れてくれました。

そして、別れ際にこの漢字を元に次に耳の裏にいれる予定のタトゥーデザインに使わせてもらうよと言って去っていきました。

その後出会った人たちの中でも漢字にかなり興味を持って話しかけてくださる人はそこそこいました。(日本語に興味があるという人も)

そして、その初日に頂いたチップを握りしめて市内でもかなりお洒落で大きな雑貨屋兼文房具屋に向かい、専用のスケッチブックを購入しました。日本よりも物価が高かったので日本からもっとしっかりした紙を持参しておけばよかったという事が反省点です。

日本漢字の「浪人」を意味を分からずにタトゥーにいれているという話がありますが、一定数日本文化に興味を持っている人はいるという事を肌感覚で感じました。

今回、私は持ち合わせの道具だけでやりましたが、本格的に書道に見た目も道具も極めるともっと効果があるのかなと思います。

路上パフォーマンスにおいて音楽はかなり大切

それと関連して余談になりますが、用意しておくとより良いものの一つに「音楽」があります。

パフォーマンスをするにあたって、一番最初に必要な事は興味をひく事です。

道を歩いていて「何をやってるのかな」のぞきにくる気持ちを持ってもらう為には、ビジュアルを派手にしたりアクロバティックな事をするなど色々あると思いますが、私が街中を歩いていても一番興味を遠くからでも引くのは音楽の力だと思います。

私はビートルズやQUEEN、ローリングストーンズ、マイケルジャクソンなどの洋楽ロックが割と好きなのですが、シドニー市内で数十メートル離れた所から聞こえてきたQUEENの「キラー・クイーン」を演奏するパフォーマーに引き寄せられていつのまにか立ち止まって聴いていました。

書くとかなり長くなりそうなので音楽の力についてはまた別の記事にするかもしれませんが、パフォーマンスと音楽の相性は最強だと思います。

私は、スピーカーを持って行ってなかったので最初は現地で買おうかなとまで考えていたのですが、私が絵を描いていた場所の近くにはたくさんのミュージシャンがいたので丁度良いBGMとなりました。

ミュージシャンがいる時といない時とでは、人の立ち止まり方が違うようにも感じます。

その場の雰囲気やパフォーマンスの演出として音楽を用意しておく事はかなり有効的だと思います。

路上パフォーマンスに最適な時間帯と季節

私が訪れた季節は、8~9月でした。

北半球の日本では夏であり、南半球のオーストラリアでは冬の時期です。

シドニー市内は朝方や夜は少し寒かったですが、日中はかなり暖かく過ごしやすい気候でした。

私は、オーストラリアの本当の夏の時期には訪れていないので、想像を含みますが最適な季節は夏で、時間帯は12時から14時の最も暖かい時間帯がベストだと思います。

私は冬の時期にやっていたのですが、日中の暖かい時間帯にはかなりの人が話しかけてきてくださります。反対に、冷えこんでく夕方くらいになると人通りは変わらないにも関わらず、話しかけてきてくれる人の数が激減します。

日が照って、暖かければ陽気な気持ちになりますが、寒いと閉じ籠ってしまう心理状態なのでしょうか。

夏に来ていれば1日中暖かいと思うので、より良かったのかなと思います。(オーストラリアの夏は12月~2月頃)

人の行動への気温や風土などは影響が大きいと実感しました。

路上パフォーマンスをするにあたっての英語力について

私は、ネイティブ並みに英語が話せるわけでも特別教育を受けたわけでも無い為、英語力はそこまで高くありません。一般的な学校で習うレベルです。

ただ、現地ではそこまで全体的な英語力の有無はそこまで気にする必要は無いかなと感じました。

日本でも絵について聞かれる事の多い内容は何個か固定されているのですが、全部聞き取れなくてもおそらくこれについて言っているなと聞き取れたら、自分のできる範囲での語彙力と文法で返答すると、現地の人も「母国語が英語じゃない人だな」とわかってゆっくり聞いてくれたり話してくれたりします。

また、オーストラリアでも母国語が英語ではないという人も一定数いたので、立場は一緒というパターンも多かったです。

どちらかというと、私は笑顔でノリ良く接する方が、日頃あまり得意な方では無いので難しかったですね。

よく英語力について、芸人の出川哲郎が海外で通訳の助けを借りずに現地の人とほぼ英語がわかっていない状況で情報を聞きながら、ロケをする企画が例に挙げられますが、本当にあのような陽気さが重要だと感じました。

パフォーマンスのチップだけで一万円をいれてくれた人

滞在から数日経ったある日、絵を描いているとアラブ系の男性が話しかけてきました。

すごく気さくな人で、絵についてや日本について質問をしてくれており、その去り際にお札を手渡して「良いものをみせてくれてありがとう」と言って帰って行こうとされました。

お札の額面をみると100ドルと記載されており、日本円にして一万円前後です。

「さすがに、何もしていないのにこの額は申し訳ない」と言っても、

それは良いあなたのアートワークをみせてくれた事に対するお礼だからまたどこかで会う事を楽しみにしてるよ!と言うのです。

一切こちらから何かを要求したわけでも無いのにです。

感謝と同時に、ここまで形の残らないその場の簡単な会話にも価値を感じてくれる人や場所もあるのだなと実感しました。

とはいえ、流石に申し訳なかったので最初に聞いていた彼の名前を漢字と片仮名で書いて手渡すと、かなり喜んでくれ、別れ際に握手をして去っていきました。

路上パフォーマンスで重要なスタンス

スタンスを語れるほどの立場では無いかもしれませんが、全体を通して感じた路上パフォーマンスに大切なスタンスは、いかに相手を楽しませられるかやギブできるかを第一に考える事だと思います。

勿論チップを多く貰うとか等々についても考えましたが、それを第一目的にするのは何か違うかなと思っています。

販売やチップをいれて欲しいという事だけを全面に押し出してやっていても、あまり見向きもされませんし「そういう欲だけなのか」と無視されます。

(現に、少し離れた所で物乞いをしている人がいました。ほとんどの人がその前を素通りしていきました。そして、日が暮れ始めた頃に私と前にいた針金細工を作るのお爺さんに向かって自分も何か作り方教えてよと笑って話しかけてきました。)

私は興味を持ってくれた人に、自分のその場でできる事で楽しませたり価値を生む事が一番重要だと思いました。

チップ等はその過程でのささやかな副産物として頂くという考え方が一番パフォーマンスをやっている中での充実度や幸福感も高いと思います。

かなり抽象的で恰好をつけた言い方かもしれませんが、お金以上の経験や今も連絡をとっている人たちに出会えた事からそう実感しています。

最後に

今回は、【オーストラリアで絵の路上パフォーマンスをしてきた話【海外画家活動】】の内容で私の視点から感じた事をお伝えしてきました。

オーストラリアでの路上パフォーマンスは音楽や書道、絵など「芸」をひとつでも持っていれば色々な活動形態で行えると思います。

本記事が一視点として、路上パフォーマンスを今後行う方の参考になれば幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

プロフィール
この記事を書いた人

2006年3月生まれ幼少の頃より細密、極彩色な自分の脳内だけに存在する空想世界の絵をアクリル絵の具を主に様々な画材で1年に140点以上制作。作品サイズは数㎝のグッズから数ⅿの巨大アクリル画まで様々。高校1年生の時の個展開催以来二人展、グループ展等展示活動を続ける。ターナーアワード、Liquitex the challenge【小松美羽賞】等受賞多数。日々制作の幅は広がり続け、各地での展示、プロジェクトの実現を構想中

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