こんにちは。画家の宮島啓輔です。
今回は、「絵画作品のタイトルのつけ方とは?思いつかない時のポイントなどを解説」のテーマで、
絵画のタイトルの付け方や意図がよくわからないという人に向けてお伝えして行きたいと思います。
絵を描いて発信するという経験のある方であれば一度は考えた事のある内容かもしれません
今回は、【タイトル】が持つ効果や考え方、付け方の例などについても深掘りしていくので是非最後まで読んでみてくださいね。
目次
絵のタイトルは作品に文脈を与える
絵のタイトルは、作品に意味やテーマを吹き込む事ができる大切な要素のひとつです。
視覚的な情報に言葉が加わる事で、鑑賞者に与えられる情報量の幅が一気に広くなるのです。
似た事例では、漫画やアニメーションなどが「絵」というビジュアルに、テキストや音声で、セリフや説明を入れる事によって、その絵に文脈が添えられる事でエンタメ(鑑賞物)として仕上がるというものがあります。
絵画もこれと似たもので、絵という「様々な捉え方のある要素」にタイトルという文脈情報を加える事で、絵の意図の伝達を促進する役目があるのです。
特に、日本からは村上隆を代表とするような現代アートの流れでは、視覚情報よりもこのコンセプトの部分を大切にする傾向にあるとも言われています。
見た目(ビジュアル)だけでの発信というのも、成り立つのであれば良いと思いますが、文脈を添えるという考え方から行くと、鑑賞者に与える情報を遮断していることになるのです。
絵のタイトルによって共感や印象が変わる
このように、絵を鑑賞する時の判断材料となる「タイトル」は、付け方によって与える印象や共感なども演出する事ができます。
例えば、花瓶が描かれた絵があったとします。
そこで、タイトルに「老人の花瓶」とつけるか「少女の花瓶」とつけるかによって観た人がその作品に抱く感情や奥行きは、結構変わってきます。
数秒で考えたので、例えが微妙かもしれませんが、実際の例では、17世紀のオランダのレンブラントの代表作に「夜警」という絵があります。
この作品は、「夜警」というタイトルで様々な書籍などに掲載されていますが、実際には昼間を描いた作品だとわかっています。
描かれているものは変わりませんが、昼か夜かによって受ける印象派変わるのではないでしょうか。
少し話がそれますが、私は、依頼型作品で「家族の干支絵」という家族それぞれの干支動物を1枚の画面に描いたシリーズがあります、依頼主の方からこのコンセプトに共感したという連絡を頂く事があるシリーズです。
詳しくは下の記事に記載しています。
また、これは難解すぎるタイトルをつけたりすると、作品も同様によくわからないものに映ってしまう事にも繋がるのです。
絵のタイトルを「無題」にする時の考え方
作品のタイトルをみた時に、「無題」と書かれている作品を、観た事のある方も多いのではないでしょうか。
作者の方が、作品のタイトルをあえて無くして、ここに言葉は無いですと判断されているからか、他にいろいろな考えや都合があるのかもしれません。
しかし、この「無題」というタイトルの形は、ある意味では、作品の入口をひとつ無くす事であり、鑑賞者に想像の余地を委ねる割合が増え、コミュニケーションを拒まれたと思われる場合もあります。
制作者側が、色々な考えや事情を持って「無題」とする事は、ひとつのあり方ではあります。
しかし、よくわからないと判断する鑑賞者によとってはよくわからないものとしか認識されなくなくなる性質を持つのが、この「無題」です。
私個人の感覚では、タイトルという要素を削るということは、もったいないと感じられるパターンを多いのではないかなという印象です。
同じテーマ(モチーフ)で描かれた連作の場合
これは、同じモチーフを何枚にもわたって描く場合のタイトルの付け方についてです。
有名な例であれば、クロード・モネが同じ建物を気候や時間帯によって何枚も描いたものがあります。
同じモチーフでもそれぞれに異なる個性や印象があれば、【〇〇〇 ~~の印象】【〇〇〇 ××の印象】のようにするのがいいかもしれません。
他には、【〇〇〇A】【〇〇〇B】や【〇〇〇Ⅰ】【〇〇〇Ⅱ】のようにそれぞれを管理しやすくしたりするために、法則的にタイトルを決めるなどもひとつの手です。
絵のタイトルを付ける時のポイント
絵を描き始める前につけるか、絵を描いている途中につけるか、出来上がった完成品をみてタイトルをつけるか、などとタイミングや状況によりけりですが、色々なパターンが考えられます。
作品の状況説明・モチーフ名をそのまま
描かれているモチーフや状況をそのままダイレクトにタイトルにするパターンです。
西洋美術での例では、クロード・モネの「睡蓮」やエドゥアール・マネの「笛を吹く少年」などがあります。
日本の画家の例では、岸田劉生の「壺の上に林檎が載って在る」という作品がよりダイレクトに状況説明型のタイトルと言えます。
曲名やタイトルから引用する
これは、既に存在する楽曲のタイトルや歌詞などから引用して絵のタイトルにつけるというものです。
私はよく用いる方法なのですが、似たものでは小説などの一説から引用するものなどがあります。
聖書の一場面を描いた西洋美術の宗教画なども、文章を絵にするという意味では近いものと捉える事ができます。
私のこの作品は、ビートルズの楽曲からタイトルを引用してます。
タイトルの引用だけでなく、曲風や文章の世界観に着想を得て作品にする事もできます。
自分というフィルターを通過させて、オリジナルのレコードジャケットや本の表紙を描くようなイメージですね。
過去の作品からの引用
これは、名画と呼ばれるような過去の巨匠たちの作品をオマージュするような形で、絵柄やタイトルを自分なりに取り入れたりする方法です。
有名な例では、ピカソはマネやベラスケスのオマージュ作品を描いていますし、日本のアーティストの田名網敬一はピカソ作品をもとにした作品を描いていたりします。
過去の名画からの引用は色々なアーティストがやっている方法であり、パクリではなく、リスペクトや自分の解釈を通すという意味では正当な表現手段なのです。
ただ、丸写しして自分の創作物にしたり、著作権法に触れたりするような描き方で発表してしまう事はだめなので、そこは気をつける必要があります。
最後に
今回は、絵のタイトルの効果や実際にタイトルを付ける時のパターンなどをいくつかお伝えしてきました。
タイトルのパターンは、作品の数だけ形があるので、今回紹介したものをヒントに自分なりの活用をしていってみてくださいね。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。