アクリル画と油彩の違いとは?初心者が気を付けるべき注意点と特徴について解説

assorted-color paintbrushes 画材

こんにちは。画家の宮島啓輔です。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-20-880x1024.png
アクリル画作品

今回は【アクリル画と油絵の違いとは?初心者が気を付けるべき注意点と特徴について解説】のテーマでお伝えしていこうと思います。

私は現在まで複数の種類の画材や技法を使用して制作してきました。

最近はアクリル画を中心に作品制作をしているのですが

リアルでの展示の際に「この作品は油絵とアクリル絵の具のどちらで描かれていますか?」とよく質問されることがあります。

実際、この二つの絵の具の描き方や技法によっては見た目はかなり似ていて見分けが付きにくいことがありますが絵の具の性質自体は大きく異なります。

それぞれの絵の具の特徴や性質、注意点について知っておく事で、自分に合った制作の際に失敗しにくい制作ができるかと思います。

アクリル絵の具と油絵の具の違い

girl, face, colorful

この二つの絵の具の一番の大きな違いはアクリル絵の具は水で溶き、油絵の具は油で溶くと言う事です。

基本的に絵の具と呼ばれるものは色のついた顔料をキャンバスや紙などの支持体にしっかり定着させるための糊の役割の展色材といわれるものと混ぜられています。

この展色材がアクリル絵の具の場合は「アクリル樹脂エマルジョン」、油絵の具の場合は「乾性油」と呼ばれるものが使用されています。

油彩画は600年程の歴史を持つ伝統ある絵の具ですが、アクリル絵の具は考案されてから70年ほどしか経っていない比較的新しい絵の具になります。

耐久性は油絵の場合保存状態によっては黄変やひび割れの可能性がありますが、アクリル絵の具は元々壁画用に考案された絵の具でもあるのでかなり耐久性は強いです。

基本的にはどちらの絵の具もきちんとしたメーカーの商品を使用して、劣悪な保存環境で無ければ所有者が生存している間の目立った劣化はしにくいと言えます。

この使用されているアクリル樹脂の性質の違いによってそれぞれの絵の具のメリット・デメリットが大きく変わってきます。

アクリル画の特徴

アクリル画作品

アクリル絵の具のメリット

・速乾性

アクリル絵の具は速乾性が高く作業の進行がかなり速いです。この優れた速乾性のおかげでスムーズに短時間で多層な表現が可能になります。

・水溶性

アクリル絵の具は専用の溶剤も販売されていますが、基本的には水で絵の具を薄め、水で簡単に洗い流すことができるので扱いやすく、使用後のお手入れを簡単に済ますことができます。

・ほぼ何にでも描ける

アクリル絵の具は多様な表面に対応して描く事ができるので、キャンバスや紙だけでなく、布、金属、木などにも使用できます。

アクリル画のデメリット

・速乾性が裏目にでることもある

乾く事が速すぎることが欠点になることもあり、長時間かけて細かい調整をしたい人や制作スピードがゆっくりな人には扱いが難しい場合がありますが画材メーカーによっては絵の具に混ぜると乾燥を遅らせることができるメディウムがあるのである程度のコントロールは可能になります。

・乾燥前と後の色の変化

アクリル絵の具は絵の具が乾燥すると色が暗くなることがあり、湿った状態で見た色と異なる場合があります。

これはアクリル絵の具に使用されている展色材の樹脂が湿っている時は白っぽい色だったのが乾くと透明なビニールのようになる事が原因です。

僅かながら色味の変化が気になるという人は平均的な価格より少し高くなるものの透明度が非常に高く乾燥の前と後で変化の少ないリキテックスプライムという絵の具の使用がおすすめです。

・プラスチック感

展色材のアクリル樹脂の質感から仕上がりがプラスチックやゴムのような質感が出る事があります。メディウム類を混ぜることで調節は可能ですが油絵の具の自然な光沢に比べると少々安っぽく見える事があります。

油彩画の特徴

油絵の具のメリット

・乾燥速度の遅さ

油絵の具で描いた作品は乾燥に時間がかかる為、作品に絵を加える時間に余裕を持つことができます。

その際描いてから時間が経っていても色をふきとったり、色の調整や細部の修正などが簡単にできます。

・深みのある色彩

油絵の具は自然な艶や深みのある色を表現することができます。また乾燥の前と後でも絵の具の色の変化は少なく、画面に塗った時の体積が乾燥後も変わらないので盛り上げた表現なども可能になります。

・歴史的な背景

油絵の具は考案されてから約5、600年程の歴史を持つ伝統的な絵の具で、ダヴィンチを代表とする巨匠と呼ばれる画家たちの多くは油絵の具を使用していました。伝統のある古典的な技法を実践したい人や忠実な模写などをしたい人はおすすめです。

油絵の具のデメリット

・乾燥時間が長い

メリットとなる場合もありますが、油絵の具で描いた作品の乾燥には長い時間が必要になります。そのためテンポ良く塗り重ねる描き方をする場合や即急な修正などをする場合、アクリル絵の具に比べると不便です。

また、乾燥を待つ間にほこりが付着するリスクがあります。

制作スピードやその作風の描き方によっては向き不向きがある性質を持つ絵の具です。

・油の臭い

水性の絵の具に比べて油性の溶剤を使う油絵の具は人によっては苦手な臭いだと感じる場合があるかもしれません。描く環境によっては換気などが必要になります。

・扱いが難しい

油絵の具は使用後の筆やパレットの手入れが水性の塗料に比べ面倒で、絵の具が取れにくくなりやすいです。

また、筆を洗う時は、溶き油とは別に専用の溶剤が必要になるなどある程度、溶剤の扱いなどを認識しておく必要があります。

・価格が少し高め

メーカーや店舗にもよりますが、やや油絵の具の方が水性の絵の具に比べて価格が高くなりやすい印象です。

激安で販売されている商品の中にはかなり粗悪な商品が販売されていることもあるので見極めが必要です。

関西在住の方でできるだけコストを抑えて制作したい方は大阪道頓堀の笹部画材がおすすめの画材屋です。

アクリル絵の具と油絵の具のどちらを選ぶべきか?

アクリル絵の具と油絵の具のどちらを使って描くかは制作スケジュールや個人の好みによって変わります。

自分の好みに従う事が前提ですが以下の大体のポイントを考慮して使用を考える事をおすすめします。

制作のスケジュール

速く作業を進めたい場合やイメージを瞬時に形にしたい時は、速乾性の高いアクリル絵の具の方が有利です。

油彩特有の質感を生かし、時間をかけてじっくり仕上げたい場合は油絵の具の方が適しています。

油彩特有の乾きの遅さは制作の都合や相性によって変わります。

作業環境

環境の悪い場所や他の人と共用の場所で作業する場合はアクリル絵の具での制作が向いています。

一方、開放的で多少汚れても問題無いアトリエがある場合は油絵の使用も快適に進められます。

最終的な作品の見た目

アクリル絵の具の方がメディウム類と混ぜることで多様な質感やタッチの表現が可能になり幅はかなり広いですが、歴史的な技法を重視し本当の意味での古典的な空気感を意識する場合は油絵の具が適しています。

アクリル絵の具でも油彩風の表現はほぼ可能なことに加えて、現代的・デザイン的な表現や水彩絵の具のような表現などたくさんの描き方ができます。

何に描くか

キャンバス、紙、木などの絵の具の塗膜を支える物質は支持体と呼ばれています。

アクリル絵の具の特徴の一つとしてキャンバス以外に石や布などあらゆる支持体に描く事ができる点があります。

対して油性である油絵の具は水性のアクリル絵の具に比べて紙などの油分を吸収しやすい下地に描く事にはあまりおらず、アクリル絵の具に比べると支持体は制限されます。

油分を吸収しすぎる下地に厚塗りで描いた場合乾燥後に亀裂の原因になりやすくなります。

油彩でキャンバスに描く際も水性下地と呼ばれる吸収力が高い下地に描くよりは油性下地と呼ばれる油彩専用の下地に描くことがおすすめです。

逆にこの油性下地に水性のアクリル絵の具で描くと剥がれてきてしまうので注意が必要です。

アクリル絵の具と油絵の具を使用する際の注意点

先程、アクリル絵の具で油性の下地に描くと剥がれると書きましたが、アクリル絵の具と油絵の具の併用の際の注意点は重ねて塗る際の順番です。

アクリル絵の具で下地を作ったり、下描きをしておいてから油絵の具をのせて描くことは完全に乾いて水分の抜けた状態であれば問題ないですが、逆に油絵の具を塗った上からアクリル絵の具で重ねて描く事は厳禁です。

油性の絵の具や下地が塗られたところに水性のアクリル絵の具で描いても弾いてしまいせっかく描いた絵が簡単に剥がれてしまいます。

販売されているキャンバスの下地も油性の下地に水性塗料で描くと同じことが起こるので確認してからの購入が必要です。

最後に

今回は「アクリル画と油彩の違いとは?初心者が気を付けるべき注意点と特徴について解説」についてお伝えしました。

ご自身の作風や制作スピードに当てはめて実際に試してみることで相性の良い絵の具が見つかるかと思います。

個人的には初心者の方は使い方によって様々な表現の可能で扱いも比較的容易なアクリル絵の具から入ってみる事がおすすめです。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

プロフィール
この記事を書いた人

2006年3月生まれ幼少の頃より細密、極彩色な自分の脳内だけに存在する空想世界の絵をアクリル絵の具を主に様々な画材で1年に140点以上制作。作品サイズは数㎝のグッズから数ⅿの巨大アクリル画まで様々。高校1年生の時の個展開催以来二人展、グループ展等展示活動を続ける。ターナーアワード、Liquitex the challenge【小松美羽賞】等受賞多数。日々制作の幅は広がり続け、各地での展示、プロジェクトの実現を構想中

をフォローする
画材
をフォローする
極彩空想世界
タイトルとURLをコピーしました