こんにちは。画家の宮島啓輔です。
色んな物が売られている100円ショップですが、最近ではアクリル絵の具だけでなく、額縁や粘土、キャンバス、イーゼルなどまで購入する事ができます。
私は普段の作品には有名アクリル絵の具メーカーのリキテックスアクリル絵の具を主に使用しています。
その他ホルベインやアムステルダムなどの画材メーカーからアクリル絵の具が販売されていますが、そのような本格的なアクリル絵の具と100円ショップのアクリル絵の具では何が違うのでしょうか?
今回は、100円ショップのアクリル絵の具と画材メーカーのアクリル絵の具の構造的な違いと使用する時の注意点などについてお伝えしていきたいと思います。
100均アクリル絵の具は値段に見合った商品
通常、大手画材メーカーのアクリル絵の具は容量にもよりますが一本の値段が約300~2000円くらいします。
その分かなり品質や描き心地がかなり良い商品なのですが、対して100均のアクリル絵の具は、一色が100円+消費税の画材としては破格の値段で販売されています。
一見値段は何倍も違うのに見た目はほぼ変わらないのですが、大手メーカー商品と100円ショップのアクリル絵の具の質には結構な差があり、安くで絵の具を作る事のできる構造上の仕組みが存在します。
この絵の具の中身の違いを掘り下げて解説していきます。
100均アクリル絵の具が安い仕組み
多くの絵の具は基本的に、顔料+接着剤でできています。
顔料は色付きの粉の事を指しますが、顔料だけでは画面に定着しないので接着剤と混ぜて使われます。
接着剤は、油絵の具であれば乾性油、水彩絵の具であればアラビアゴムを顔料と混ぜる事で絵の具ができます。
アクリル絵の具であれば、アクリル樹脂が接着剤の役割を果たします。
きちんとしたメーカーの絵の具の値段が高い理由として高級な顔料が高濃度で使われているからなのです。
一番有名な例で、油絵の具のウルトラマリンブルーは、現在では代替顔料が使われる事が多いですが、昔の製法ではラピスラズリという金と同じ価値の貴重な石の粉を使っていたので製作費も高額になったと言われています。
現在では、化学合成した顔料を使う事で安くなっていますが、日本画などは、現在も自分で顔料と膠を混ぜて絵の具を作っています。
そこで、100円ショップのアクリル絵の具は
染料+体質顔料+接着剤
でできています。
染料とは、インクの事です。インクジェットプリンターや水性マーカーに使われているインクと似たものです。顔料は水に溶けませんが、染料は水に溶ける性質があります。この染料が顔料の代わりとなって色を付ける役割になります。
体質顔料とは、それ自体は色を持っておらず、絵の具のかさを増やす目的で使われています。
染料を使ってかさ増しの顔料を染めているイメージです。
接着剤にはアクリル樹脂が使用されているので、アクリル絵の具ではありますが、元々の絵の具の構造が異なるので本格的な絵の具より安い価格設定となっているんですね。
100均アクリル絵の具の注意点
この染料で作られた100円ショップのアクリル絵の具は、光の当たるところにしばらく放置すると色褪せてきます。
染料は顔料よりも安く絵の具を作れますが、外部の影響で劣化しやすい性質があるのです
塗り重ねも本格的なアクリル絵の具に比べると薄く、濁りやすいです。
安くで購入できる事が魅力ではありますが、人の手元に渡ったり、長く保存しておきたい場合であれば、100円ショップのアクリル絵の具はあまりおすすめできません。
描いている途中や直後はそれなりに描けはしますが、せっかく時間をかけて描くのであれば、少し高くてもきちんとしたメーカーの絵の具を使った方が良いかなといった印象です。
100均アクリル絵の具は目的別で使い分けよう
100円ショップで販売されているアクリル絵の具やキャンバスや筆を使ってもそれなりのものは描けるので、遊び感覚で使ったり、短期イベント用、絵を保存する事を想定していない場合であれば色褪せや剥離を気にせずに使用できるのでいいかもしれません。
ただ、続けて絵を描く方や描き方を深めて行きたい方は、発色の安定さ、耐久性、色数、混色のしやすさなどが圧倒的にレベルの高い本格的なメーカーの商品を使う事をおすすめします。
最後に
100円ショップにはアクリル絵の具だけでなく、キャンバスや筆、筆洗バケツ、画用紙などアクリル絵の具を描くための道具が安くで販売されています。
筆洗バケツは十分使える商品ですし、画用紙なども簡単なスケッチをするには結構コスパが良いと思います。
本格的に描く事には向いていませんが、アクリル絵の具がどんなものかと触れてみたり、遊んだりする事には向いているので使い分ける時に参考にして頂けると幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。