目次
なぜ「良すぎるアイデアなのに評価されない」のか
「もっと新しいアイデアを出せ」
「誰もやっていないことをやれ」
現代では創造性の重要性が強く求められています。しかし実際には、新しいアイデアほど評価されないという現象が起きています。
良いはずのアイデアなのに理解されず、斬新であるほど批判される。
この原因は、単に時代やセンスなどの軽い問題ではなく、人類史の本質的な特性が関わっています。
今回の記事では、人が新しいものを嫌う理由を整理しつつ、現代において評価される創造性の作り方まで具体的に解説していきたいと思います。
人は本能的に「本当に新しいもの」を嫌う
まず前提として押さえておくべきことがあります。
それは、人は理性では創造性を求めながら、無意識ではそれを避けているという点です。
ペンシルベニア大学の研究では、Implicit Association Test(IAT)を用いて、人の無意識の認知を測定しました。
この結果、以下の傾向が明らかになっています。
- 多くの人が「創造性」を無意識にネガティブなものと結びつけている
- 新しいアイデアよりも、既に証明されたものを好む傾向が強い
つまり、人は「新しいものが欲しい」と言いながら、内面ではそれを避ける構造を持っています。
人が未知なものを嫌う進化的な理由
この矛盾は、人類の進化を考えると理解できます。
原始環境において、「未知」はリスクそのものでした。
新しく見つけた植物には毒が含まれているかもしれないし、土地勘のない森林で狩りは、猛獣に襲われる危険性もあります。
こんな状況では、新しい事に挑戦するより、すでに安全が確認された行動を選ぶ方が生存確率は高くなります。
結果として、人間には
- 未知を避ける
- 安全なものを選ぶ
という傾向が組み込まれました。
したがって、新しいアイデアに抵抗を感じるのは、合理的で自然な反応だと言えます。
天才のアイデアが最初は否定される理由
この傾向は、芸術や文化の歴史を辿ってみても明確に表れています。
パブロ・ピカソの例

20世紀最大の芸術家パブロ・ピカソは、キュビスムの創始者のひとりとして現代では高い評価を得ています。
そのピカソが1907年に発表した「アヴィニョンの娘たち」は、現代ではキュビスムの初期作品として近代美術の革命的な転換点として扱われていますが、発表当時では、批評家や画家仲間から理解不能で野蛮な作品として、酷評の対象でした。
ピカソ自身もこの作品をしばらく公にはしなかったといわれています。
The Beatlesの例
The Beatlesも、現在では教科書にのるほどの音楽史における重要な存在です。
しかし、来日公演時には、伝統を乱し、風紀を脅かす存在として保守派による反対運動が起きたほどでした。
しかし、かつては不良の音楽とされたロックを芸術の域まで引き上げ、以降の音楽史に多大な影響を与えました。
どちらとも、現代では超ビックネームで、ピカソやThe Beatlesを低く評価する人はほぼいないでしょう。
しかし、その天才的な存在がやって来た時点では、理解の枠を超えているため、多くの反対意見が出る事もあるのです。
また、これは「インターネット」においても同じです。
インターネットが登場した90年代~2000年代前半にかけて、コンピューターを持っている人は一部の人だけでした。
今でこそ国民の殆どがスマホを肌身離さず持ち歩き、インターネットが支える情報社会が無ければ社会インフラが成り立たないくらいに、インターネットの恩恵を享受して私たちは生きています。
しかし、このインターネットも、登場した当初は、「虚業だ!」や「詐欺」などとバッシングを受けていることもありました。
話が逸れるのであまり長く書けませんが、日本は特に世界の土俵に立てるネットプラットフォームを築けるポテンシャルのあったエンジニアたちに難癖の罪をかぶせて引きずり下ろし、発展を遅らせた歴史があります。
【原則】人は理解できないものは選ばない
ここで重要になるのが、「理解」という視点です。
人は基本的に、理解できないものは選びません。
これは、人間が介入する事における原則でもあります。
どれだけ優れたアイデアであっても、
- 意味が分からない
- 使い道が想像できない
この状態では、評価されることはありません。
つまり、創造性が評価されない原因の多くは、「理解不能さ」にあります。
評価され、伝わるアイデアとは少し視点がずらされている
では、どのようなアイデアが魅力的かつ受け入れられるのでしょうか。
結論としては、既存の延長線上にある新しさです。
完全に新しいものではなく、既存の要素が含まれていたり、そこに少しだけ切り口がずらされている状態です。
この状態が心地よく最も受け入れられやすいと言えます。
しかし、あまりにも既存要素に偏り過ぎて保守的になると、逆効果にもなります。
ここで一つの例があります。
出版業界では、ベストセラー本の企画を立てる際には、過去のベストセラーの焼き直しをやる事があるのだそうです。
毎年のベストセラーを数十年分を並べてみると、似たジャンルの人気が規則的なサイクルで訪れるといいます。その為、次はこのジャンルの本が売れやすいと見込んだ編集者はそのジャンルの本を前もって仕込んでおくことで、ベストセラーを狙い撃ちするそうです。
ただし、まったく同じジャンルと内容のコピーでは、無く、少し視点をずらしたり、今の社会に合わせた内容に再編集をしてからです。
会話術やビジネス本が毎年数えきれない程書店に並ぶのも不思議ではありません。
つまり、色々な新しい情報や分野は出ているものの、人間の根本的な欲求や需要の本質はあまり変わっていないのです。
あの創造性の象徴のようスティーブ・ジョブズが開発したiPhoneも、電話や音楽プレイヤー、パソコンといった既存の要素を組み合わせたものでした。
全くの未知なものではなく理解できて使える範囲に収まっていたからこそ普及したのです。
仮に、江戸時代の人に電話やパソコン、iPhoneをみせてみても、理解不能な固い箱だと思うかもしれません。
このように、評価される創造性とは、「理解できる範囲での変化」であるのです。
自分のやりたい事が伝わらない理由
これは、創作活動や発信などにも繋がる話です。
例えば、私はこのサイトで記事として公開している内容以外に、文化人類学や宗教史、洋楽のニッチな話などが個人的には非常に興味深いと思っていますが、それをそのまま提示しても殆どの人には届きません。
理由は単純で、受け手には前提知識や興味があまりないからです。
ここで、大切なのは自分の関心を変えようという事ではありません。
伝え方を変えるという事です。
人が検索したり見つけやすい言葉や表現にする
日常的な文脈に接続する
入り口を広くする
人の興味と接続する
等々、色々な工夫によって、はじめて内容が伝わるようになります。
創造性を伝わる形に作り変える考え方
「創造性」や「独自性」というと、完全に新しいものを生み出す0→1のようなものだと考えられがちです。
しかし、実際にはいかなる創作物であっても
・既存の要素の掛け算
・視点・切り口をほんの少しずらす
・理解できる形に落とし込む
のいずれかを逸脱したものは存在しません。
先ほど例に出したピカソであっても、アフリカの原始芸術やセザンヌなど過去の芸術要素の掛け算の上になりたっています。
まとめ 良いアイデアは伝わって初めて価値が生まれる
人は本能的に新しすぎるものは避けます。これは進化によって形成された自然な仕組みです。
それを前提に、「良いアイデア」というものは、頭の中にいくら蓄積しても価値を持ちません。
それが現実の世界で形にする人は中いない為、価値は非常に大きくなります。
その為、どれだけ優れたアイデアであっても、理解されなければ意味がありません。
しかし、先ほど挙げた例も含め、時代を本当の意味で引っ張っていっているのは、当時では理解されなかった新しすぎる存在でもあります。
もし、伝わる形の創造性を実現させたいという方に今回の記事がお役にたてば幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

