
こんにちは。画家の宮島啓輔です。
「絵を描いてみたいけれど、どの絵の具を選べばいいの?」
という疑問を持つ方は少なくありません。画材屋さんに行くと、種類の多さに戸惑ってしまう事もあるかと思います。
この記事では、初心者でも失敗しにくい絵の具の選び方と、それぞれの特徴、そしておすすめのメーカーまで、簡単に解説していきたいと思います。
結論から書くと、私の最もおすすめの絵の具はアクリル絵の具です。その理由もあわせてお伝えしていきたいと思います。
目次
絵の具は何から始めればいい?絵の具選びの前に考える3つのポイント
絵の具を選ぶ時のポイントとして以下の3つをまず考えてみましょう。
どんな素材に描きたいか?(紙、キャンバス、布など)
どんな表現がしたいか?(軽やか、しっかり、重厚など)
後片付けがどれくらい楽か?(水だけで落ちるか、溶剤が必要か)
他にもいくつか選ぶポイントはありますが、これらを明確にすることで、自分に合った絵の具が見えてきます。
主な絵の具の種類と特徴
以下それぞれの絵の具の根本的な違いは、色のついた粉(顔料)を画面に定着させる為の糊の役割を果たす「展色材」の違いにあります。
水彩絵の具は、アラビアゴム、アクリル絵の具はアクリル樹脂、油絵の具は油がそれぞれの展色材です。
この3つの絵の具はそれぞれ全く性質が異なります。
水彩絵の具 透明感のある淡い仕上がり
水彩絵の具は、水で薄めて使うタイプの絵の具で、グラデーションやにじみなど、軽やかで柔らかな表現に向いています。
紙との相性が特に良く、持ち運びやすいため、スケッチにも向いています。
水彩絵の具の良さでもある透明度は少しクセがあるので、扱いに慣れない場合があります。
メリット:手軽、透明の高いタッチ、後片付けが簡単、道具が少なくて済む
デメリット:修正がしずらい、ベタ塗りには向いていない、コントロールに慣れが必要
アクリル絵の具 初心者に最もおすすめ
アクリル絵の具は、水彩のように水で溶かして使えますが、乾くと耐水性になるのが最大の特徴です。これにより、塗り重ねや修正がとても簡単で、初心者でも扱いやすい画材となっています。
使用する水分量を調節する事で、水彩画風・油絵風など描き分ける事ができます。
発色が良く、乾くとツヤのある仕上がりやマットな質感が選べるなど、表現の幅も広がります。さらに、紙・キャンバス・布・木材・プラスチックなど、さまざまな素材に描けるのも大きな魅力です。
DIYやインテリアアートにも活用する事ができます。
乾燥が非常に早いため、作業テンポが良くなる一方で、筆を洗わずに放置すると固まってしまうので、筆やパレットの管理には少し注意が必要です。
速く乾く事で素早く描き進められる事が利点ですが、ゆっくりと時間をかけて描きたい人には不向きとなります。
解決策として、乾きを遅らせるメディウムと混ぜ合わせる方法があります。
この遅乾性メディウム以外にも、多くのアクリル絵の具メーカーが表現の幅の広がるメディウムを発売しています。
メリット:発色が鮮やか、修正しやすい、乾燥が早い、素材を選ばない
デメリット:油彩のようにゆっくり描きたい人には向かない。
油絵の具 じっくり描きたい人向けの本格派
油絵の具は、乾くまでに数日から数週間かかるという特性を持ち、そのぶんじっくりと絵に向き合える絵の具です。
重ね塗りやぼかしがしやすく、繊細な色の変化や奥行き、彫刻のように盛り上げる表現ができます。
西洋美術史のダヴィンチやレンブラント、ゴッホなどの有名作家たちが使用してきた約500年の歴史を持つ伝統的な絵の具です。
ただし、専用の溶剤(ペトロール、テレピン油など)を使って薄める必要があり、道具や片付けにも手間がかかるため、気軽に始めたい方にはやや不向きです。換気や保管場所なども考慮しましょう。
メリット:色の深み、長時間かけて描ける、重厚な仕上がり
デメリット:溶剤が必要、乾燥が遅い、片付けの手間がかかる、においが気になることもある
初心者にアクリル絵の具がおすすめな理由
絵を始める人にとって、「手軽に始められる」「失敗しづらい」「描いていて楽しい」という3点はとても大切です。
ここまで、水彩絵の具・アクリル絵の具・油絵の具の3つを紹介しましたが、その中でもアクリル絵の具は
水で使えるので準備が楽
乾けば耐水性になるので重ね塗りしやすい
素材の制限が少なく、いろいろな物に描ける
色が鮮やかで完成作品が映える
初心者向けのセットも豊富でコスパが良い
油彩・水彩風に描く事ができる
等々の扱いやすさや表現の幅広さの条件を多く満たしています。
それぞれの絵の具にメリット・デメリットはありますが、総合的にみると、「まずは絵を描く楽しさを感じたい」という方には、アクリル絵の具が一番適していると思います。
絵の具種類別おすすめメーカー9選
アクリル絵の具
リキテックス(Liquitex)
アメリカ発のアクリル絵の具の王道的なブランドです。発色の良さや絵の具の種類の豊富さ、品質の高さがかなり魅力的で、私もほとんどこのメーカーの絵の具を使用しています。
大容量低価格版からガッシュ、最上位ランクのものまでひとつのメーカーの中に様々な種類がある事も魅力のひとつです。
ホルベイン(Holbein)
色の純度が高く、少量でもしっかり発色。滑らかな塗り心地で初心者からプロまで対応。私はリキテックスに次いで、よく使用しており、安定した品質のメーカーです。
・ターナー(Turner)
やわらかくのびの良い質感と発色の良さが魅力。コスパも良く色数が豊富。アクリルガッシュ(不透明アクリル絵の具)でも有名なメーカー
アムステルダム(Amsterdam)
オランダの「Royal Talens」メーカーのブランドで、大容量絵の具が充実しています。コスパと質のバランスが丁度良いです。リキテックスレギュラータイプほどの品質ではありませんが、これだけでも十分満足のいく制作ができると思います。
私は、大きめの作品を描く時に、リキテックスメーカーの大容量絵の具と合わせてよく使用しています。
水彩絵の具
ホルベイン(Holbein)
発色のバランスが良く、にじみも美しい。初心者〜上級者まで幅広く愛用されています。他メーカーの水彩絵の具と比べると、違いがよくわかるほど使い心地の良い水彩絵の具です。私もよく使用しています。
ウィンザー&ニュートン(Winsor & Newton)
英国の伝統ブランド。コンパクトな固形水彩やチューブタイプもあり、携帯にも便利です。
サクラクレパス
学校教材としてもおなじみのブランドで、まずは試してみたいという方にぴったりです。
この3つのメーカーの他に、ターナーやぺんてる、月光荘など色々なメーカーから販売されています。
油絵の具
ホルベイン(Holbein)
国内の油絵の具定番メーカーのひとつです。水彩・アクリル絵の具と共に発色や品質が安定しているメーカーです。初心者向けのセットも豊富です。水で溶ける油絵の具からプロ用の超高級絵の具まで種類も豊富に揃えられたメーカーです。
クサカベ
こちらも国内の老舗メーカーで、高品質な絵の具です。色の定着が良く、落ち着いた発色が特徴で、コスパの良い絵の具でもあります。
マイメリ
マイメリはイタリアの絵の具メーカーで、アクリル絵の具も発売しています。「顔料と溶剤以外に何もいれない」という理念のもとに作られており、発色もよい絵の具です。
補足:油絵の具を選ぶときの注意点
アクリル・水彩絵の具は水だけでOKですが、油絵の具は専用の溶剤(ぺトロール。テレピン油)が必要です。
筆洗いも水ではなく専用のクリーナーを使い、しっかり換気を行う必要があります。感想まで日数がかかるため、描きかけの管理も考慮しましょう。
絵の具と一緒に揃えたい道具
筆: 丸筆や平筆を数種類(絵の具の種類によって適する筆の種類も変わります。)
パレット: 紙パレットか洗って使えるプラスチック製、段ボールにサランラップを巻いたものでも代用できます。
水入れ: 2〜3分割のタイプが便利(特にアクリル)
(支持体)描く素材: スケッチブック、キャンバス、木材、布など
ふき取り用具: 雑巾やティッシュ
最後に
今回は、「【初心者向け】絵の具の選び方とおすすめ|水彩・アクリル・油絵の違いをわかりやすく解説」の内容でお伝えしてきました。
同じ色でも、それぞれの絵の具がまったく異なる性質や効果を持っており、それぞれのメーカーごとに全く違う使い表情があります。
是非、この記事を読んでくれた方に適した絵の具をみつける事に役立つと幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。