コラボレーションの効果と作り方の型、実践方法について

ここでは、展覧会やイベントにおける「コラボレーション」の効果やその活かし方について紹介したいと思います。

押さえておくべき点やその効果を最大限に発揮する為のポイントについて書き記したので、是非最後まで読んで、活動に取り入れてみてくださいね。

少人数と組むことで、新しい観客と表現が生まれる

個展は、一人の作家が自分の世界観を最も濃く見せられる場です。作品の色彩や題材、展示空間、言葉や音楽、照明まで含めて、自分の考えっている世界を隅々まで設計する事ができます。

だからこそ、誰かと組むという事には、その選択権を分ける事になり、慎重さも必要になります。

参加者が何十人にもなる大規模なグループ展では、来場者の関心が分散しやすく、一人ひとりの作家の魅力が記憶に残りにくいという事が起こります。

また、参加者が多い展示では告知も散らばりやすいものです。作品数が多く、ジャンルイや作風もばらばらで、来場者は一周したものの、一人ひとろの作家の名前や作品まで覚えきれないという展示も少なくありません。

抽象度が少し上がるんですね。

もちろん、大人数の展示そのものが悪いわけではありません。明確なテーマを持つ公募展や地域全体を巻き込むような芸術祭、信頼できるキュレーターが構成したような企画展には多くの作家が集まるからこそ生まれる力があります。

ただ、私を含め自分の名前や作品世界を知ってもらう段階にいる多くの作家にとっては少人数で組み、企画の軸をはっきりさせた方が成果に繋がりやすいと私は考えています。

では、少し前置きが長くなりましたが、ここで考えたいのが二人展や三人展、異業種との共同企画のような、小さなコラボレーションです。

コラボレーションは、相手の集客力に乗るといった他責思考的な方法のためだけにあるものではありません。

コラボレーションの魅力は、自分とは異なる観客、技術、題材、価値観が入ってくることで、一人ではつくれなかった展示体験や作品が生まれる点にあります。

少人数で組むことで、企画の軸が見える

二人展や三人展には、観客が作品を見比べられる面白さがあります。

作風が似ている二人なら、共通する主題を深く掘り下げられるでしょうし、対照的な2人なら、同じテーマに対する異なるアプローチで見応えある企画をつくる事ができます。

違いが大きい場合は、共通する主題を一つ置くと展示がまとまります。

また、軸のみえやすい展示では、作品だけでなく、作家同士の関係性や所属などの部分も観賞の一部になります。なぜ、その二人が組んだのか、両者の経緯がどのように主題に影響したのかと言う部分ですね。

例えば、モネやゴッホらが活躍した印象派の時代には、現在誰もが知る有名画家たちが、フランス等で交流があり、お互いに影響されたり文通をしたりという事がありました。有名なものが、ゴッホとゴーギャンの共同生活があります。そのような交流期間をテーマにした展覧会が、現在開催され、ゴッホやゴーギャンの絵が並ぶと、たちまち話題になると予想されます。

そんな感じで、作家同士の人生やその交流も、アートの価値や文脈のひとつになるんですね。

美術史を少し学ぶとこのような文脈の作り方の例はいくらでも思い浮かびます。

私を含めた、まだまだ無名の作家であうっても、様々なコラボレーションのストーリー性を生む事ができます。

新しい観客との出会いが生まれる

コラボレーションの分かりやすい効果は、普段なら出会わない観客に届くことです。

画家同士の二人展なら、互いのファンがもう一人の作家を知る機会になります。自分の作品を観に来てくれた人が、相手の作品や活動にも興味を持ったり、またその逆もあります。

人は、自分が既に信頼している人や知っている人が、おすすめするものの方をフラットに知った時に比べて優先しやすい傾向にあると言われています。

画家と音楽家が組む場合も同じです。音楽を聴きに来た人が展示をみたり、絵を観に来た人が音楽家を知ることもあります。画家と飲食店、料理人、工芸作家、服飾作家、地域で活動する人が組む場合も、美術展へ来る習慣のなかった人に作品を観てもらえる可能性もあります。

好きな音楽家のレコードジャケットからそのデザイナーに興味を持ったという事や、好きな文筆家の絵本から挿絵作家を好きになったというとイメージがしやすいかもしれません。

ただし、相手のフォロワーや影響力が大きいからといって、それだけで良い結果になるわけではありません。

コラボする事による相乗効果として両者が噛み合うような部分が大切です

例えば、アジアン料理を出す店での展示では、アジアン雑貨やエスニックな作風の展示をすると、その世界観はとてもマッチした印象的なものになります。

元々、雑貨を扱っているお店で、そのような小物を求めるお客さんを多く抱えている環境での展示販売になると、作家は雑貨商品やグッズの展開なども行う事でその効果は大きくなるんですね。

私は、この前モンゴルを旅してゲル作りを日本で行っている人とのコラボイベントで、モンゴルの遊牧民族の絵を描いたりしました。

相乗効果の生み出し方

これらの、相乗効果を生み出すために活用できそうな、私が考えた視点をいくつかここに書いておきたいと思います。重複するものもありますが、是非活用してみてください。

ざっくりと最初にまとめておくと、コラボレーションの効果は「視点を広げるコラボ」「価値を増やすコラボ」「人を増やすコラボ」の大きく三つの本質に集約する事ができます。

これを少し念頭において、以下の型を見て行ってください。

ここに書いた事だけが全てでは無いので、是非直感的に何かユニークな企画を思い浮かんだり、今までに無い組み合わせの構想があるという方は是非それらを大切にしてくださいね。

対比型

Ⅰつ目が対比型です。

先ほども少し書きましたが、同じテーマ等を、それぞれ異なる解釈で表現するタイプになります。

例えば、「猫」や「植物」を主に描く作家という主題があったとすると、

写実画家×漫画家、日本画家×油彩画家などですね。

主題は共通しているけれど、解釈や作家の立ち位置が違うことで対比され、比較して鑑賞できるというものです。

例えば、コロナウイルスが流行った時、妖怪の「アマビエ」を絵に描く事で病気がおさまったとする江戸時代の話にあやかって、多くの作家の人がアマビエを各作風で描くというブームがありました。この時、アマビエを描いた作家のグループ展のようなものが開催されていたと記憶しています。

印象派の有名画家、クロード・モネとルノワールの間にも似た話があります。この二人が仲良くキャンバスを並べて同じ風景を描いた「ラ・グルヌイエール」という作品が現在も残っています。

クロード・モネ作
ピエール=オーギュスト・ルノワール

モネは、水辺や風景全体に着目していますが、ルノワールは特に人物にフォーカスした書き方がされている事がわかります。

これは、同じ印象派の中で似た例になりますが、「対比」という企画の視点は様々な例を考える事ができます。

また、この同じ主題やテーマというのに該当する部分は、色々なものが考えられます。

今挙げた印象派のような美術の潮流などを設定しても良いでしょう。

または、同じ画材や制作技法、コンセプトにしてみても良いと思います。

この「同じテーマを設置して対比関係を演出する」という方法はたくさんの企画に活用可能になります。

有名な美術館の企画や実際のグループ展等を観察すると、この対比型のヒントはたくさん転がっています。

補完型(異分野の組み合わせ型)

これは、異なる分野同士が互いに持っていないものを補完するタイプです。

例えば、画家×音楽家、画家×カフェ、画家×花屋、画家×文筆家などが考えられます。

一方が持っていない体験価値を、もう一方が補完するというものになります。

例えば、画家×カフェ(飲食)などであれば、絵の鑑賞と食事を掛け合わせる事もできます。少し話が逸れるので詳しくは掘り下げませんが、絵と軽い飲食は、鑑賞行為に五感で没入できるという効果があります。

少し分野が異なりますが、「オペラ」という芸術は、セリフが全て歌で表現される音楽と演劇が融合したコラボレーション芸術のひとつです。

同じく、絵本なども、挿絵と文の二つの要素が噛み合って芸術として成立します。

自分の専門分野だけでは成し得なかった事を、コラボレーションによって補い合う事で、そのインパクトを高める事ができるんですね。

作品だけに留まらず、空間、音、香り、食などが一体となって体験に残るという点で、異分野との組み合わせは無限に考えられます。

この異分野同士の組み合わせによって、本来なら出会わなかった双方のファンが、もう一方の存在に興味や認知が生まれるきっかけになる事もあります。

世界観融合型

では、続いて一つ前の「補完型」の延長線上にある「世界観融合型」です。

それぞれ独立した世界観を混ぜて、新しい世界観を作るイメージです。

「A+B」で並べるだけではなく、第三の世界観が生まれるようにするものですね。

例えば、「現代的要素×伝統古典的要素」、「陸の絵×海の絵」等々が考えられます。

私は、東南アジアの仏教国に行ったとき、派手に電気で飾り立てられたエレキ仏像を観ました。これもある意味で現代と伝統が融合したアートとして新しいものができています。また、日本の伝統芸能として有名な歌舞伎ですが、最近では海外戯曲や漫画作品を演じるネオ歌舞伎というものがあるそうです。

また、「陸の絵×海の絵」は、あくまで一例ですが、それぞれ海の生き物を沢山描く人と陸の建築物や自然を描く人などがいたとすると、そのグループ展やコラボ展を開催すると、一つの地球のような世界観を作る事もできます。

この世界観融合型は、意外な物の組み合わせや一体感など、共創的な考え方としてヒントになるかと思います。

ブランド強化型

続いては、ブランド強化型です。

これは、作品そのものや、認知というより、補助的に「格」を上げるコラボです。

例えば、美術館や老舗企業、有名建築、歴史ある場所など、「あの場所と組んだ画家」や「興味深い事をやっている画家」のようにブランド価値が残るという意味でのコラボレーションですね。

私の場合では、そこまで立派なものではありませんが、大阪の商業施設キューズモールの公式キャラクターとコラボした作品が今も施設内に展示されています。

この作品を観て知ってもらったり、連絡を頂く事がたまにあります。

また、日本画を描いているという人にとって、伝統舞踊や和風建築の内装や襖に絵を描くという事や、

仏教的な絵を描いている人が歴史ある寺院などで絵を依頼されたとなると、その効果が出ます。

このブランド強化型というのは、別段、権威あるものと組むという方法で無くとも行う事はできます。

例えば、私はオーストラリアの路上で出会った服飾デザイナーをしているという現地の人とTシャツを作るという企画が持ち上がった事がありました。

これは、行う内容自体はそこまで難しい事はありませんが、「海外」というぱっと見のもの珍しさにインパクトが出て何人かの方から連絡がきたという事がありました。

若干抽象的な説明になってしまいましたが、組み合わせの切り口や、希少性などは探せばいくらでも転がっています。

ただし、注意点として、このような作家のブランド向上意欲につけこんで見せかけの海外展示やそれっぽい企画を高額な費用で提案してくる会社などもあるので、その辺は注意しながら自分というブランド力を上げるコラボレーションを探究してみてください。

ストーリー型

続いては、制作過程などがそのまま物語になるストーリー型です。

最初に、かなり重要な事になりますが、「物語」というのは人間にとって強力な力を持っています。

これは、人類の歴史や色々な分野で証明されている事実です。

人間は、単純に結果だけを提示されるより、そのプロセスに強く惹かれる傾向にあります。

例えば、「普通に果物を作っています」と言うより、「サラリーマンから農家に転身して試行錯誤の末にやっとこの土地で育て上げた果物」と説明した方がたくさんの人の購買意欲を刺激します。スーパーなどで農家の人の顔写真がパッケージに掲載されているのもその為です。

それらを踏まえて、絵の展示において例えば、

一枚の作品を2人で描く、日本と海外でリレー制作した、激動の時代を歩んだ2人の展示など「どうやってできたか」の過程や背景にある物語自体をコンテンツにするものが考えられます。

展示のコンセプトや作家の人生の部分に物語性を与えて演出するというものです。

あまりやり過ぎると分かりにくくなってしまいますが、完成品以上にプロセスに価値を生むという視点を少し持っておくと、より魅力的なコラボレーションを行う事ができます。

コラボレーションを実践するための5つの確認事項

では、ここまで少し長めに、コラボレーションについてお伝えしてきましたが、実際に実践にうつす時に整理しておくと良い5つのポイントを挙げておきます。

自分のやりたい事や考えている事を明確にできるので是非活用してみてください。

何のために組むのか

まず、確認すべきは、コラボレーションの目的です。

認知を広げたいのか、販売につなげたいのか、作品の世界を拡張したいのか、展示の体験価値を炊けⅿ体のか。目的が曖昧なまま組むと、「一緒に何かやった」という自己満足だけが残り、具体的な成果のようなものに結びつきにくくなります。

単に思い出作りと捉えるならば別ですが、建設的に進めるならば、その方向性をしっかり据えておく必要があるんですね。

相手と自分の違いは噛み合っているか

コラボで重要なポイントは、似ている事より、違いが上手く噛み合う事にあります。

ここまでに挙げた対比型でも、補完型でも良いですが、これらは全て自分一人で出来なかった事ができるというところに鍵があります。

ただし、違えば何でも良かったり、自分だけが得をするのが良いというのではなく、大切なポイントは、自分とコラボ相手が一つの企画として上手く噛み合って集約するところにあります。

誰に届ける企画なのか

コラボレーションという企画を立てる上で、「第三者(他者)に届ける」という事が最大の前提になります。だからこそ、相手の客層に自分のできる事がどう重なるのか、またその逆についても考えなければなりません。

届ける相手が見えていない、内側で行うだけのコラボは実行に移しても、ぼやけてしまします。

私は、最初は何か企画の先に、それを受け止めてくれる人がいるという所までふわっとしていた時期がありました。

なので、届ける相手やそこに関わる情報の部分の解像度は可能な限り上げてから挑みましょう。

役割・お金・権利を事前に決めているか

実践面で最も大事な点がここです。

自分一人でやる場合も同じですが、構想を地に足を付けて進める点は無くては進められません。

誰が告知するのか、会場費は誰が負担するのか、売上はどう分けるのか、作品画像や写真を今後使ってよいのか。という部分を曖昧に進めると後でトラブルが起こったり、微妙な事になります。

特に画家の場合、作品画像・原画販売・グッズ化・展示記録・来場者リストなどの扱いは事前に確認しておくべきです。

このような企画進行は、クリエイティブな事以外にも以外と泥臭い事の方が多かったりします。

あるいは人にまかせてしまうというのもひとつの手ですね。

自分一人であれば、何とか都合はつけられますが、複数人で進めるとなると、共通認識やテキストとしてビジネスライクに進める事が何よりも大切です。

最近、私は、必要な連絡がとても遅かったり、その場の感情でいう事が変わる人に企画を共同でやりませんかと言われた事がありましたが、丁重にお断りしました。そんな事から世の中のマネージャーという仕事の重要性を改めて理解できました。

個人活動の画家の場合、それを一人で全部やる事になるのでとても大切なポイントになります。

コラボ後に何を残すのか

コラボやイベント、企画は、当日だけで終わらせるのは、もったいないです。

実際に開催したという事実は、展示写真、制作過程、そこから得た気づきの発信、次回企画への接続などコラボ後にも使える活動の証拠や資産として残す事で、その効果は残り続けます。

一回の企画を一回のイベントだけで終わらせず、自分の作家活動の証拠や履歴に組み込む事が大切です。

また、それらを見据えて、後々にコンテンツにできそうなコラボ設計をするというのもひとつの方法になります。

まとめると、コラボレーションを実践する前には

目的 、相手との噛み合い 、届ける相手 、役割・お金・権利 、終わった後に残すもの、この五つを確認しておくと良いです。

【掛け算の効能】コラボレーションは、制作活動に新しい視点を与えてくれる

「掛け算の思考」は、何かクリエイティブ性の高い事を行う事でかなり大切な考え方です。

よく巷で引用される話題ですが、あのapple社が発売しているiPhoneも、元はパソコンと電話を合体させたものでした。ゼロからスマートフォンが生まれたわけではないんですね。

世の中の発明品を見渡しても、すごいアイデアをとっても、何かそれまでの歴史や既存の要素の掛け算の上に成り立っているという事はよくある事です。

むしろ、ゼロ→1より、どんな1を足して10を作るかの方が大事なんですね。

その上で、コラボレーションというものは、それまでの自分の視野や能力ではできなかった事を実現させてくれる、「掛け算」なんですね。

異なるリソースやノウハウを掛け合わせる事で、単独では生みだせない相乗効果を創出できる力を持っています。

是非、今回の記事を読んだ皆さんも、コラボレーションを柔軟に捉えて、活動を展開していってください。

それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。

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