画家にとって個展会場はお店であり、作品は商品です。
そこで、「根拠のある在庫数」という考え方が大切になってきます。
例えば、1000円の定食を出して飲食店を出したい人がいたとします。そこで、利益を出して食材を仕入れ、維持費や生活費を賄っていくには、月30万円以上の儲けを出す必要があります。
その場合、単純計算で、毎日営業したとすると、1日1万円以上(10食以上)の売り上げが必要になります。ただ、これはすぐに出した計算なので、実際はもっと維持費がかかったり、休みの日を作るとそれ以上の数を出す必要が出てきます。
例えば、ここで、500円のカフェメニューを追加して、お昼時以降の定食が売れにくくなる時間帯にもお客さんに来てもらうという施策を考える事もできます。
これらの飲食店の例と同じく、画家が個展で利益という部分を視野にいれるならば、そのような商品のラインナップというものを考えておく必要があるのです。
・どのくらいの商品数を用意するのか
・どのくらいの価格帯にするのか
・人気商品と新作・オーダーの考え方
などを作品単体ではなく、全体の構成で設計する必要があります。
それでは、今回の本題に入っていきたいと思います。
目次
作品価格の決め方
作品価格の決め方は、何種類か存在します。
私の無料公開している記事でも一部語っている事なのですが、「号単価」「時給」「原価率+利益」
の大きく3つ、或いはこれらのミックス型が一般的です。
いずれも厳密にこうでなければならない!というルールは無いので、柔軟に捉えてください。
号単価
これは、よく一般的とされる値付け方法です。
キャンバスのサイズ規格には○○号とついていますが、一号あたり○万円と決める方法ですね。
1号あたり、1万円~が多いと聞きます。
F3号作品であれば、3万円前後の値段になります。
サイズが大きくなるにつれて、値段や購入者数も少なくなるので、少しずつ号単価を割安にしていく事も多い方法です。
キャリアが上がったり、人気が高い作家や高級画材などを使っている場合は、この号単価を上げていく事も多いと聞きます。
時給
これは、サイズに関係なく制作にかかった時間に対して、自分で設定した時給を掛け算する方法ですね。
売れない場合もあるので、時給を2000~3000円と設定したとします。6時間かかった作品であれば、1万2千〜5千円くらいの計算になります。
この金額に材料費や売れない場合の金額、気に入っている分の価格などを付け足す事もできます。
原価+利益
これは、作品というよりは、雑貨やグッズ系に使える考え方です。
例えば、30個販売を目指した雑貨の一個あたりの原価が100円だったとします。30個全体では、3000円ですね。そこに制作にかかった時間や手間賃なども含めて考えます。
では、販売価格を700円と設定すると、一個当たりの利益は、600円になります。
30個全部売れた場合は、30×600=18000円になります。
かかった材料費などに焦点をあてる考え方ですね。
【余談】値段の付け方の公式を少し再考してみる
ここまで、大きく3つの作品価格設定の話を書いてきました。
殆どの作家の方は、これらの方法のいずれかを受け継いだ方法で作品の価格を決めています。
ただですね。私は、「作品」というものにおいては、ここまで量り売りにしないで良いのでは?
と思っています。
大量生産される既製品であれば、厳密な式を使った値付けが必要ですが、「作品」は美しさや非言語的な価値を売っています。
それならば、むしろ、大まかには価格の値付けに一貫性はあっても、「同じサイズで微妙に値段が変わっても、逆にこだわりや気に入っている点などが伝わるのでは?」と思うのです。
想像してみてください。
同じサイズ感の宝石の原石があっても、金、銀、ラピスラズリ、ルビーなどによって値段は違うはずです。
作品価格が全て統一されている事も良いですが、作者のあなたの考えを持って作品値付けをこだわってみるヒントになれば幸いです。
作品構成は在庫のピラミッドで考える。
展示在庫数の考え方についてです。
これも一例なので、考える際のヒントとして受け取ってくださいね。

ここで使えるのが、「在庫のピラミッド」という考え方です。
これは、作品価格帯ごとに作品点数を用意する考え方で、大きく以下のように分かれます。
・高価格帯
10号以上の大きめの作品
制作時間やコストのかかったもの
展示のメインビジュアル作品
点数の全体割合は1~5点ほどの少なめでもいい
・中価格帯
F3~F10号の中サイズ作品
サムホールサイズ以下の低価格帯商品よりは売れにくい
点数は高単価商品よりも多めに用意
・低価格帯
サイズがサムホールサイズ以下
一番求め足れやすい
点数は多めに用意を推奨。10点以上でもOK
・グッズ・ミニ原画類
通常作品より多めに生産できる商品
初めて自分を知った人でも購入できる一万円以内の価格帯
商品棚に出しておく商品は十数個ほどで、売れ次第、新しいものを追加陳列
商品の柔軟性が高いので展覧会終了後も雑貨屋さんなどに設置してもらう事もできる。
ここで、重要なポイントは、低単価・小サイズ商品ほど多く、高単価・大サイズほど少なく用意する事で、売り上げは安定します。
例えば、全ての作品をF100サイズの一作品100万円で販売したとすると、一切値段を見ないで初見で買うお客様も、もしかしたらいるかもしれませんが、そう簡単な事ではありません。
私の売れた作品の中で一番大きい作品は、F50号の作品ですが、何年も観ていてくれて信頼関係があってお買い求めいただきました。
つまり、大作を高単価販売する事は、完売作家でも無い限りかなり博打なのです。
そこで、大切になるのが、先ほども書いた「大きい作品は少なく、小さい作品は多く」です。
人によって予算は変動します。
予算を1万円までと決めている人は5万円の作品は購入しません。その為、ここで数万円単位の作品だけを販売していても、予算一万円の人が何も買わなければ作品販売という点においては収益ゼロとなり、失敗します。
そして、低単価で小さいサイズの作品ほど多く売れます。
ただし、小さい絵だけの展示だと、圧倒的な別の世界観演出などが無い限り、展示空間の映えや看板として目を引くという事がやりにくくなります。
これらの需要と供給の関係を踏まえて、作品展示点数を設定していきましょう。
しかし、このように準備をしていたとしても、誤解を恐れずに言うと、
絵に魅力が感じられなかったり、価値を伝えられなかったりすると、そもそものその絵を欲しいという感情も生まれないので、この考え方はあまり効果を発揮しません。
お金を対価として交換してでも欲しいと思われる絵を準備し、会場に人が来て、天気や展示環境も十分だと仮定したときに、最後の一押し的な方法として、この展示点数の考え方をお伝えしました。
絵の在庫の考え方
個展を例えば1週間開催したとしても、全作品が売れるという事はほぼありません。
完売作家と呼ばれる人は別ですが、多くのある程度上手くいった場合の販売割合は、全体制作数の3割ほどなのです。
つまり、1度の展覧会だけでは7割ほどの作品は売れ残り在庫となって残ります。
そこで、重要になる考え方が、作品の発表回数を増やすと作品を求めてもらう確率がアップするというものです。

ポイントは、会場や時期を変えるという所にあります。
1つの絵を1回の個展で発表するだけで眠らせておく事は非常にもったい無い事です。
そして、最初の個展で売れなくても数年の時を経て求めてくださるお客様に出会うという事もよくあります。季節や訪れるお客さん、他作品との対比や繋がりなども開催する度に変わりますしね。
そして、一枚の作品に対しての露出回数を増やす事で、徐々に手元に残る在庫数は減ります。
しかし、これには次のような注意点もあります。
【新作】の重要性
絵の在庫は、別の場所で展示会を行う事でそれを求めるお客さんに巡り合う事で、手元から旅立っていくと書きました。
しかし、「【新作】を毎回の展示会で用意する事」はとても重要です。
マインドや精神論では無く、現実的に在庫だけで勝負をしていると、売れ残りで展示会を開く事になり、回数を追うごとに客観的な質は下がっていくからです。
そして、現在進行形で動いていない存在は、過去の積み重ねと合わせて今を生きて新たな挑戦をいている人には負けます。
下の記事に詳しく書いていますが、漫画の神様手塚治虫は、圧倒的な功績や評価を経ても、常に若手に負けまいと仕事を詰め込んで亡くなられる直前まで仕事をし続けていました。
一見根性論や精神論に見えますが、
リアルタイムに動き続けている姿をみせるという事はかなり大切です。
人気の絵画スタイルは用意しておく
何回か展示販売や作品の発表をしていると、売れ筋の絵、人気の絵というものが見えてきます。
もちろん、個人単位で深く刺さる絵や別の考え方もあるのですが、全体で観た時の人気作品ですね。
アーティストでいう所の王道曲やヒット曲のようなものです。
私の場合は、花瓶シリーズと鳳凰作品と暖色の作品などです。


これらのシリーズ作品は、これまでに描いた十数枚のうち9割以上がお買い求めいただいています。
逆に白黒のペン画作品は、狭く深く人気がある感じです。色を使った作品の方が幅広さでいけば人気がある状態です。
ここで、個展での売り上げを安定させるための重要になる事は、
これらの売れ筋の絵を数点補充して用意しておく事です。
ミュージシャンの例で考えてみて欲しいのですが、
多くのミュージシャンは、新作アルバム発売の度に、新作楽曲中心に王道曲を入れたセトリでライブツアーを行います。
新作に価値が無いというわけではありませんが、既存のファンを楽しませる為に王道曲も安定的に取り入れているんですね。
新しさも大事にしつつ、人気のスタイルというものを毎回の個展に取り入れる事で、博打要素を減らせる考え方になります。
ただ、どこまで作家がその売れ筋を意識するかや過去作再制作を行うかのバランスは人それぞれになるので、自分に最適化した範囲で考えてみましょう。
オーダーも受け付ける
それに繋がる考え方として、オーダーをいつでも受け付けるという事はおすすめですね。
過去作品をまとめたポートフォリオやInstagramなどアーカイブを作っておく事で、既に売れている作品でもオーダー受注制作するという事が可能になります。
因みにこれは私の作品・オーダーページ↓
先ほども書きましたが、人気作品は何度も求められやすい傾向にあります。
また、購入するには大きすぎる作品を、一回り小さく描いて欲しいというパターンや。お延が作品をアクリル画として描いて欲しいという方もおられます。
お客様がいつでも注文しやすいように作家側が準備を整えておく事は重要です。

