【作品集・ポートフォリオの活かし方】世界観・信頼・販売で知っておきたい知識と方法

「まず最初に知っておきたい基本」ポートフォリオとは何か

まず、最初にポートフォリオとは何かということから整理しておきます。

ポートフォリオという言葉を聞くと、「これまで作ってきた作品をまとめたもの」というイメージを持つ方が多いかもしれません。もちろんそれも間違いではありません。実際に、作品を一覧で見せる役割は、重要な基本機能の一つです。

ただ、作家活動や展覧会と言う文脈で考えた時、ポートフォリオの役割はそれだけではありません。

ポートフォリオとは、自分がどんな作品を作ってきたのか、どんな世界観を持っているのか、どのような活動をしているのかを相手にまとめて伝えるため媒体でもあるんですね。

そこで、「世界観の演出装置」と「信頼を手渡す道具」として捉えてみると様々な活用をする事が出来ます。

しかもそれは、デジタルでもアナログでも成立します。

InstagramのようなSNSも、手作りの作品集も、印刷所で作った冊子も、広い意味では全てポートフォリオとして機能します。このように考えると、ポートフォリオを作家活動を前に進める重要な道具として、補助資料以上に活用できるようになります。

今回は、そんな「ポートフォリオ」を活用する際の方法論や視点などについてお伝えしていきたいと思います。

ポートフォリオは作品をまとめる以上の意味がある。

一般的には、作品集やポートフォリオを「作品を見せるための冊子」と捉えています。もちろんそれは、正しいですが、実際にはそれ以上の意味があります。

というのも、作品を一点ずつその場で説明するのには限界があるからです。個展の場で出会った人、たまたま作品を観て気になった人、知人から紹介された人など、こちらのことをまだ十分に知らない相手に対して、毎回口頭で一から説明するのは大変ですし、伝わる情報量にも限界があります。

そこで、ポートフォリオがあると、自分の代わりに、ある程度まとまった情報を相手に伝える事が出来ます。

どんな作品を作ってきたのか

作品の種類や一貫性

活動の期間・形態・経歴

どんな事ができるのか

どのような世界観や考え方を持っているのか

等々です。

こういった事は、言葉だけの説明で済ませるより、作品や活動記録のハイライトがまとまって見える方が圧倒的に伝わりやすいです。

つまり、冒頭にも書きましたが、ポートフォリオとは「作品一覧」であるとともに、相手に自分の活動を理解してもらえるための近道なのです。

デジタルポートフォリオとしてのInstagram

私の場合、デジタルのポートフォリオとして一番活用してきたのはInstagramです。

ブログや文章系のコンテンツもありますが、それでも「過去にどんな作品を作ってきたか」をヴィジュアルで一番パッと見せやすいのはやはりInstagramだと感じています。(もちろん目的や特徴によって変わります。)

ここで大事な事は、Instagramを必ずしも集客のツールとして使わなくても良いという事です。よくSNS運用などと聞くと、リールやショート動画を頑張って人を集めるという方法が言われますが、私自身はむしろ別の使い方を重視して画家アカウントを使っています。

それは、すでに私の事を知ってくれた人が、後から過去作品や活動を見返すための道具として使うという事です。

例えば、個展やライブペイントで実際に会った方、知人を通じて私の事を知った方、ブログや短文投稿系のSNSから知った方です。そういった人たちが後からInstagramにとんできてくれた時、この人は大体こんな作品や活動をしてきたんだなということが一目で伝わります。

しかも、スマホがあれば誰でもすぐに見ることができますし、ヴィジュアル特化で作られたSNSである事から、作風や雰囲気が視覚的に伝わりやすいとう強みがあります。動画も載せられるので平面作品だけでは伝わりにくい制作風景や空気感も補えます。

この意味でInstagramは、人を集めるためだけのSNSではなく、すでに接点を持った人に、自分の世界観を深く理解してもらうためのポートフォリオとして非常に優秀なツールなんですね。

もちろんショート動画投稿や広告機能などを駆使して集客装置にする事もできますが、私の場合は主にポートフォリオ要素重視で使っています。

Instagram以外では、ピンタレスト等も使えると思います。

アナログの作品集は手に取れる世界観になる

一方で、アナログのポートフォリオにもデジタルとはまた異なる強い価値があります。

私は、旅行に行ったときの絵や、現地で制作した作品の図版を、自分で大きめに印刷し、それを綴じて簡易的な作品集のようなものを作ったことがあります。いわば手作りのZINEのようなものです。

これは情報量としては限界がありますし、商業出版のように整ったものではありません。しかし、その代わりに手に取れるという強さがあります。

会場に置いておけば、来場者は自分のペースでめくりながら見ることができます。壁にかかっている作品だけではなく、その背景にある旅の流れや、別の土地での制作、過去作とのつながりも感じてもらいやすくなります。

しかも、こうした手作りのものは、それ自体が一つの作品のようにも機能します。単なる資料ではなく、「この人はこういう形でも世界観を作るんだ」と感じてもらえるのです。

例えば、思い出の写真をスマホ等の画面上で観るより、アナログのアルバムを作って手作りしたものの方がどこか物質感があってページをめくりながら思い出を思い起こすようなあのイメージです。

つまり、アナログの作品集は、情報を渡すだけのものではなく手に取れる世界観として、画面越しではなかなか得られない角度の情報を提供する事ができるんですね。

立体絵本のように仕掛けを作ったり、装丁を自分で工夫したりと色々な事ができます。

余談になりますが、本の著者の人の話でこんな事を聞いた事があります。それは、webの記事で書いた文章より、本として出したものの方が、それを読んだ読者の人から「感動しました」や「人生が変わりました」と感想をもらう事が圧倒的に多いそうなのです。

私は、これは、情報の受け取り方が「受動」か「能動」かの違いにあると思います。例えば、SNSのコンテンツやYouTube動画などは、どちらかと言うとタイムラインに流れてきたものを流し見で受け取る「受動型」です。細かい事をいうと他の事をしながらでも、情報を受け取る事ができるんですね。

対して、「本」は自分からこの本を読むと決めて気の散るものを遮断して、ページをめくっていくという「能動型」で情報に触れにいく構えが必要な傾向にあります。

つまり情報に対する向き合い方が変わるんですね。その分その内容への解像度や読み込まれる度合いも変わってきます。

そんな理由から、アナログ冊子には、効率面でやや手間がかかるからこそのメリットがあるように思います。

印刷業者を使えば作品集はそのまま商品になる

さらに一歩進んだ内容になると、作品集は、そのまま商品にもなります。

今は、プリントパックのような印刷サービスを使えば、自費出版に近い形で、自分の作品集や小冊子を高いクオリティで比較的手軽に作ることができます。紙質やサイズ、ページ数なども豊富に選べるので、工夫次第でかなり見栄えするものが作れます。

ただし、商業出版のように大量部数を前提とした価格にはなりませんし、少部数だと1冊あたりの単価は上がります。しかし、それでも十分に意味があります。

なぜなら、個展などに来てくださる方の中には

原画を買う予算は無いけれど、何か持ち帰りたい、この世界観を手元に残したいという方が一定数いるからです。この部分の詳しい話は、以下の記事に書きました。

この記事に書いてある事を、簡単に要約すると「個展を企画する際、作品を並べるだけでなく、世界観を設計してオリジナルディズニーランドを作るという視点で設計すると展覧会を「体験」としてできるようになり、そうする事で作品やグッズには鑑賞物+αで体験を持ち帰れる記録物としての価値が生まれる」というものです。

そう考えると、作品集は、原画ほど高額ではなくポストカードより情報量が多く、世界観も感じられる立ち位置の商品になります。

この意味で、世界観を持ち帰ってもらうための入口の商品として成立します。

ポートフォリオや印刷物は手が止まっていても動いてくれる

ここは、当たり前のようで意外と大きなポイントになります。

原画作品は、一点一点、自分の手を動かして作らなければ増えません。つまり、自分が制作を止めれば、基本的には新しい商品も増えません。

しかし、作品集やカレンダー、ポストカードなどの印刷物は、一度データと形を作ってしまえば、その後は刷り増しができます。もちろん完全に何もしなくていいわけではありませんが、少なくとも一から作り直す必要はなくなります。

これはかなり大きなメリットです。

作家活動の幅を広げるとなると、制作以外にも事務作業や展示の準備、SNSなどやる事が色々と増えます。そうした中で印刷物のような複製可能なコンテンツがあると、自分がその瞬間に手を動かしていなくても、会場に置いておける商品が存在する事になります。

また、展覧会は会期が過ぎるとそれで終了ですが、複製可能なものは違います。仮にリアルタイムで行うものが終わっても、その後に何度も何度も見返してもらえたり、世界観を伝える事ができるんですね。

つまり、複製可能な印刷物やwebコンテンツは、活動の記録と同時に、自分の代わりに動いてくれるストック型のコンテンツでもあるのです。

カレンダーやポストカードは、実用性を持ったポートフォリオでもある

作品集だけでなく、印刷物にはいろいろな応用があります。

たとえばカレンダー、あるいはポストカードセット。
場合によっては、日めくりのような形式や、小さな冊子なども考えられます。

こうしたものの強みは、単に持ち帰ってもらえるだけではなく、生活の中で使ってもらえる可能性がある事です。

カレンダーなら日常的に目に入り、ポストカードなら飾ったり、見返したりされる事があります。

物語要素を加えた小冊子なら、ただの図録ではなく、読み物として読んでもらえるかもしれません。

つまり。実用性や見返す理由がある印刷物は、ただ単体の記念品よりも記憶に残りやすいのです。また、同じ絵でも実用性という要素をほんの少しいれる事で価値を感じてもらえる幅も広がります。

この視点は意外と重要です。

作品を売るという事だけを考えると見落としがちですが、作家の世界観を長く手元においてもらうというという意味では、こうした印刷物は非常に相性がよくなります。

ここで紹介したものを全て実行する事は難しいですが、ひとつの視点として持ってみてくださいね。

販売だけでなく、特典やプレゼントにも使える

さらに、複製可能な印刷物などの媒体は、販売に限りません。

例えば、大きな作品を購入してくださった方に、簡易版の作品集を一冊プレゼントする。或いは抽選企画や何かの節目に特典としてプレゼントするなどの使い方も十分に考えられます。

このとき重要なのは、作品集そのものが「おまけ」ではなく、ちゃんと喜ばれる価値を持っていることです。きちんと作られた印刷物であれば、受け取った側にも満足感を届ける事が出来ます。

コスト面もあるので、その辺のバランスを考える必要はありますが、「展覧会を体験価値として設計する」という事から様々な作品集の活用ができると思います。

作る場合は何のために使うのかを決めておく

ここまでポートフォリオや印刷物の良さについて書いてきましたが、もちろん何でも作ればいいという話ではありません。

印刷物には初期費用がかかります。小数部で作ると単価も高くなりがちですし、目的が曖昧なまま作ると在庫が残ることもあります。

だからこそ、作る前に考えておきたいのは

これは販売用なのか

名刺代わりなのか

会場設置用なのか

特典用なのか

という役割の部分です。

この役割がはっきりしていれば、サイズも部数も内容も決めやすくなります。逆にここが曖昧だと、何となく豪華なものを作ったのに、使い道が定まらないということにもなりかねません。

この作る動機や目的の部分を抑えておく事で、発想ややるべき事も決まっていきます。

私が最近、実際にお会いした方から聞いた話では、旅をして、それをテーマにZINE(小冊子)を作り、その旅の費用や夢の実現の為に応援型、つまりクラウドファンディング的にお金を支援して頂き、その返礼品としてZINEをプレゼントするというものです。

これは、必ずしもクラウドファンディングで無くても、そのテーマを実行している過程を発信してその後販売するという事もできると思います。

このように、最初に目的や、テーマを設定しておく事で、例えば現地の材料をその冊子作りに取り入れて限定数制作する事もできます。その扱うテーマの土地の紙や布を装丁等に使った本というのも、それだけで付加価値を生む事もできるのです。

ポートフォリオや印刷物は便利ですが、便利だからこそ、目的を先に決めることが大切なんですね。

【まとめ】ポートフォリオは世界観と活動を前に進める媒体である

ポートフォリオというと、過去作品をまとめた資料のように思われがちです。けれども実際には、それ以上の役割を持っています。

  • 世界観を見せる
  • 相手の理解を深める
  • 信頼を作る
  • 会話を生む
  • 商品になる
  • 特典になる
  • 活動を支えるストックにもなる

このように、ポートフォリオや印刷物は、作家活動の中で非常に多機能です。

だからこそ、単なる記録物として考えるのではなく、活動を前に進めるための媒体として捉えることが大切です。

自分の作品をどう見せるか。
どう理解してもらうか。
どう持ち帰ってもらうか。
どう次の機会につなげるか。

そうした視点でポートフォリオを考えると、作品集というものの意味は一気に広がります。

ただ作品を並べるだけで終わらせず、自分の世界観や活動全体を支えるものとして活用していくと、個展や作家活動はより前に進みやすくなるはずです。

それでは、今回の記事はここまでになります。最後まで読んで頂きありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました