こんにちは。画家の宮島啓輔です。
「音を芸術にする」という制作方法を考えたことはあるでしょうか。
私はこれまでに、「音楽×絵画」のテーマで探究し、何枚も作品を描いてきました。
しかし、ネットでその方法論や考え方を調べてみても、体系化された情報として検索にヒットする事はあまり多くありません。
しかし、私がアートや創作に関する情報を発信していると、「音楽と美術」に関する質問を何人かの方から頂く機会があったため、
今回は、「音楽から絵を描く5つの具体的な方法」のテーマで、ピックアップしたものをお伝えしていきたいと思います。
目次
【音楽から絵を描く】文脈・歴史的アプローチ
それでは、まず一つ目。
「文脈・歴史的アプローチ」です。
これは、私もよく用いている方法です。
具体的にいうと、その音楽の詩が表現している世界観や曲が作られた経緯や歴史的な文脈などから絵を描く方法です。
ヒントになるのは、西洋美術史です。
西洋美術の長い歴史は、「キリスト教」の教義や聖書の一場面を文字が読めない人でも理解できるように視覚化する目的で絵画が制作されてきました。これも、文脈→美術作品になっています。
もう一つ例を出すと、「絵本の挿絵」です。
これは、文と絵の作家が別の場合、多くが文章が先で絵本作家がそれをもとに世界観を想像して絵をつけてます。
これもテキスト情報(文脈)→美術(絵)の流れで描かれています。
これを音楽の世界に当てはめて考えると、一番近いイメージは【レコードジャケット】ですね。
アーティストの写真が使われる事もありますが、ジャケットデザイナーがアルバムの世界観に合わせて写真やイラスト、文字配置などを総合的にデザインします。

私のこのアクリル画作品は、The Beatlesの楽曲【Lucy in the Sky with Diamonds】の歌詞からアルバムジャケットを依頼されたと想定して勝手に描いたものです。
この「文脈・歴史的アプローチ」は、歴史画や絵本、レコードジャケットなどを参考にするとより、効果的に音楽に関連する文脈から絵画作品を制作しやすくなります。
【音楽から絵を描く】AIやコンピュータを使う現代的なアプローチ

では、続いて、「AIやコンピューターを使う現代的なアプローチ」です。
「AI」というとネガティブな事が囁かれますが、ここでは、音楽の数学的なデータや感情的なにゃんすの部分をダイレクトに視覚化する「変換ツール」として捉えてみましょう。
これもいくつかの方法が考えられます。
例えば音楽の波形や周波数をリアルタイムに映像や画像に変換する手法です。
ものすごくかみ砕いて言うと、
音の振れ幅、音程(周波数)は、機械によって捉える事ができます。
音は物質が細かく振動し、それが音波ととして空気や液体、固体を伝わって鼓膜に届いています。
アナログな方法では、理科の実験で、振るえた状態の音叉(おんさ)を水につけたりすると水面に波が起こります。
この、音が発している波は、機械を通すとそのままでも目で見る事ができます。
これを図形の大きさや色、動きなどに連動させる事で、より絵画のように視覚化できるという考え方ですね。
また、「3Dヴィジュアライザー」という音やデータを視覚化する機械を使えば、音楽に合わせて画面の中で変形する立体オブジェクトを視覚化させる事もできます。
ただし、ここまで私も書いていて、少しテクノロジー的で小難しい面があります。
もっとアナログでイメージしやすい例を考えてみました。
太鼓(ドラム)など表面の膜を振るわせて音を発する楽器があったとします。この太鼓の表面にビーズや紙吹雪、砂など、飛び散りやすいものを撒いておきます。
そうすると、この楽器を叩いて振動を起こしたときに、もちろんこれらは飛散するので、この飛散した時の広がりや振動の痕跡が視覚化された絵画のようになっていると捉える考え方ですね。
強く叩いた時、優しく叩いた時、あるいは楽器の種類によっても異なる効果が得られます。
つまり、物理的な振動や波形を、そのまま絵画作品にしてしまうという事です。
【音楽から絵を描く】数学的オリジナルルールを使う方法
では、続いて「数学的ルールを使う方法」です。
ひとつ前に紹介したコンピューターを使ってそのまま絵画作品にする方法に繋がる方法です。
これらは、あくまでコンピューターや楽器などを通過させる事で視覚化をします。しかし、「創作する」という点では、あまり作者の意図が介入しにくく、「手を動かしている感」が少ないです。
そこで、「数学的ルールを使う方法」を用います。
作者本人に、先ほどの「コンピューターを使ってそのまま絵画作品にする方法」を落とし込む事になります。
どういう事かというと、作者の中で、
「ドラムの音はこの図形(色)」
「大きい音や粗々しい部分はコントラストを付けて描く」
「柔らかい曲は淡い色彩を使う」
等々のように、オリジナルの法則をあらかじめ決めた状態でそれに沿って描き進めていく方法ですね。
自分自身を、変換装置と捉えて制作する方法になります。
【音楽から絵を描く】象徴物連想型

音楽だと一目でわかる記号やモチーフな何が思い浮かぶでしょうか。
私の場合は、「ト音記号」や「五線譜」でした。
他には、ピアノの鍵盤や楽器のイラストが考えられます。
これらの音楽から連想される具体的な記号やイラストを直接絵に描く方法です。
一番最初に紹介した文脈・歴史的アプローチの方法と重なる部分がある方法ですね。
ト音記号の渦巻やピアノ鍵盤の白黒など、音楽だと見てすぐにわかる象徴物をそのまま絵に描くとその絵を観た人に
「これは音楽に何か関連しているのかな?」という事が伝わります。
特に、「ト音記号」などの意味を持った象徴的な模様は、刻印や家紋のようにメッセージを乗せる事ができます。
話が逸れますが、私はインドバラナシのガンジス川のほとりを歩いていた時、修行僧のような人に勝手に額に槍模様の顔料を塗りつけられました。ヒンドゥー教のシヴァ神を表すマークだそうで守護してくれるマークだと言われました。

私は信心深くないのでそこまでですが、「シンプルな模様」は、国旗や集団のマークのように、シンプルでメッセージ性の強い効果があります。

【音楽から絵を描く】直観力非言語的共感覚アプローチ
では、最後に5つ目の「直観力非言語的共感覚アプローチ」と言うものです。
冒頭から書いていて感じていたのですが、そもそも「音楽→美術」は非常にテキスト情報に落とし込んで伝えるのが難しんですよね。
ごちらも芸術分野という非言語的な要素が強いものなので、この文字情報で伝えるには限界があります。
そこで、最後の方法は、「直観力非言語的共感覚アプローチ」です。
端的にいうと、ここまでの理屈やルールなどに従い過ぎず、その時々に自分が音楽から感じ取ったものを絵に置き換えていこうというものです。
ただ、これだと、まだこの記事としてはふわっとしているので少し掘り下げたいと思います。
実は、この「直感」というのも、様々な経験やインプット、それまでに蓄積した学びなどの集合体の上に成り立っています。
あまり、「天から降ってきた」のような方向では語りたくないので、もう少し書いてみます。
「直感」とは、通常であれば論理的な思考や分析の推論を経て導き出す答えを、感覚や無意識的に瞬時に捉えることです。
過去に脳みそに蓄積した経験や感情、知識、感覚の脳内のデータベースを高速処理して導き出した結果が、ピンとくるような感覚に繋がっています。
その為、熟練した分野や知識が豊富な分野での直観力の的中率は非常に高いと言われているものの、逆に知識不足の分野や、誤ったインプットに基づいて理解している分野においては、その直観力は外れやすいとされています。
AIを作る場合においても、論理的に積み重ねて導き出す方に比重を置いたモデルもあれば、直観力重視のエネルギー消費を少なくしたモデルもあります。
つまり、ここまで前半に紹介した、理屈で論理的に絵を描く方法、またはオリジナルの画法をある程度言葉で説明できるものを蓄積した集合体の上に、ここで紹介した「直観力非言語的共感覚アプローチ」は成り立つと考えられます。
また、人によっては、4%ほどとされているそうですが、本当に文字に色を感じたり、音に味を感じたりと異なる感覚が自動的に生じる「共感覚」があるそうです。
ただ、感覚は生まれた時から自分の感覚しか知り得ないので、他の人の感覚と比較したり本当に共感覚かと見抜く事は難しい部分はあるかもしれませんね。
どこかで読んだ内容ですが、真の共感覚者は、色や感覚が、数年経っても変わらないほど強く、逆にそうでない思い込みの場合などは、その場限りで同じ質問を繰り返すと答えが変わったり具体的では無いそうです。
いずれにしても、おそらく私は当事者では無いと思うので断言した書き方はできません。
【モーツァルトとベートーヴェン】2人の音楽家から得られるヒント
ここまで5つの方法について紹介してきました。
ここで、ひとつ音楽史の巨匠2人から学べるヒントについて少し書いてみたいと思います。
モーツァルトとベートーヴェンは、どちらも古典派音楽を築いた重要な人間です、二人は1787年にウィーンで短期間会っていたという話もあります。
モーツァルトの演奏や曲調は、あまりピアノのペダルを踏ます、非常に軽快で弾力的、躍動感があると言われています。
ところが、ベートーヴェンは、ペダルを多用し、論理的に整理された構成で重みをもったものであります。
当時は、ペダルは音を濁すものとされていましたが、ベートーヴェンはそれを多用して、革新的に色々な効果を狙ったそうです。
2人の楽譜をみてみると、モーツァルトは最初から最後までほとんど修正せずに、頭の中でできた音楽をとまらずに書きあげたスピード感があります。
一方ベートーヴェンの楽譜を解析すると、何度も何度も書き直し、推敲して曲を完成させた痕跡が残っています。
今回紹介してきた「音楽から絵を描く方法」には理屈的なものから直感的なものまで5つを挙げました。
どちらが良いというわけではありませんが、今回紹介した方法をこれを読んで頂いた人の中に落とし込み、
ここでのモーツァルト型(直感的)とベートーヴェン型(論理型)の双方をハイブリットで使いこなしてみましょう。
まとめ
ここまで、「音楽→美術」の具体的な方法論をいくつかの視点からお伝えしてきました。
今回は長くなってしまうので、5つとしましたが、今回紹介した事例や考察以外にも「音楽と美術」のテーマでは、一冊の本が書けるくらいの情報量があります。
なので、数百数千万文字数になる内容は今後ブログやコラムなどに書き溜めていきたいと思っています。
また、個展やイベントなど、直接会いにきてくれる方や連絡を頂ける方には、他の記事で扱っている内容などもお伝えしているので是非。
それでは、最後まで読んで頂きありがとうございました!

